![]() ![]() ![]() ![]() 門さんの作品2冊持っていますが、静と動の世界。どちらも味わい深くてじんわり沁みます。「1+1=1」はどんな想いで作られたのでしょうか。 「1+1=1」は20代の終わり頃から考えていたイメージで、人の人生を映画にした場合、台詞や演技を削ぎ落し究極にシンプルにしていった時、映画は紙芝居のようになるのでは?と。「個」から始まって「出会い」「連帯」「愛」「家族」となり、「エゴ」「孤立」「気づき」「再生」へと続いていくお話です。文章はなく絵と数字だけ。文章がないので読み手自身の頭に浮かんだお話をつけてもらう。すると読み手の経験や考え方に添った物語になる。もっと絵の枚数も描いていましたが、どんどん削ぎ落しました。その頃、海外で子ども達と一緒に絵を描くワークショップを行う機会があって、アフリカやアジアなどのろう学校や一般の学校、フリースクールなどを訪問することがありました。英語もウガンダ語も手話もわからない。でも絵はわかる。表情や仕草でも気持ちはわかる。この本をどこの国の子ども達も翻訳なしで読めるように、とタイトルや本文は数字にしたんです。 謎解きみたいな数式ですよね。では、もう一冊の「ハンドトークジラファン」はカラフルで賑やかで楽しいキャラクターがたくさん登場する物語ですが、これは? 1つ目の理由は僕の両親から僕がうまれて、僕の子どもにつながっているのを何かの形にして残そうと。いつまで生きられるかわからないし、何かに残したいと思ったのです。大人になってからやっとわかる、というものより子どもの時にわかるようなものを。2つ目の理由は、それまでにも手話をデザインして世の中に出していたのですが、手話を勉強している人たちではなく、手話を知らない人たちに向けて作りたかった。手話は「言葉を超えたコミュニケーション」の「入口」。でも、出口は手話ではなく、顔の表情やジェスチャーや筆談、さらには絵やダンスなどいろいろある。その「出口」がすごいんだよ!と一般の人たちに知らせたくて作りました。個人の門秀彦というひとりの人間から発すると重たくなってしまう気がしたので、キャラクターを通してメッセージを送ろうと。アンパンマンやドラえもんも、作者よりもキャラクターが際立っているでしょう?受け取る側がリラックスしてくれるように、キャラを前面に出して自分を後ろにしました。 手話を知らない、ろう者を知らない人への思い。確かにおもしろい!これからはどんな目論見がありますか? 年を重ねると経験も増え、それによって自分を見つけてくれる人も変わります。縁がつながった人とそこでまた何か生みだしていけたらと現実的に思っています。僕はできるかわからない遠い未来のことを考えるタイプではないので、今年来年で何かできることないか?と。現在、いろんな事を考えていますが、その中の一つを言えば、去年、はじめてテレビアニメをやりました。その経験があって、今、次のことを考えるようになっています。まだ内緒ですけど。 門さんもまだ小さなお子さんを育てていらっしゃいますが、習い事を考える子育て中の同世代にどんなメッセージを送りたいですか? 例えば、有名な画家たちだけが特殊で優れた才能があるわけではなくて、画家でない人でも素晴らしい絵を描く人はいっぱいいます。「好きなこと」で「飯を食う」のは一見楽しそうですが、騙されるな!と言いたい(笑)。「好きなこと」と「生きていくための仕事」は別物です。「仕事」なんて事は、状況と環境、身体的能力や特長、大人数と接するのが好きな人、少数の人とひっそりと過ごしたい人…そういうことによって選べばいい。「仕事」が燃料だとしたら、「好きなこと」は人生を楽しくし、飯をうまくするもの。 歌が好きな子は「歌手を目指さなければならない」ではなく、ただただ飽きるまで歌い続ければいい。好きなことをやり続けることと、食べていくことは別。好きな事で食べていく人も稀にいるというだけ。大抵の子どもは飽きっぽいですが、それで僕はいいと思います。次々と興味あることが変わっていくわけで、それはしょうがない。だから状況と環境が許す限り何でもやりたいようにさせます。楽しいと思えるものが見つかるまでは退屈だと思いますが、見つけたら簡単に手放すなと言いたいですね。親とか先生に「それやり続けても仕事にはならないよ」なんて言われても。 ---ありがとうございました! 2019年5月取材・文/マザール あべみちこ ![]() ![]() 門 秀彦 書籍紹介
【東京】
【大分】
|
|